
インプラントは歯を失った場合に行う治療のひとつで、顎の骨にネジのような形状の人工歯根を埋め込んで、その上に被せ物を取り付けます。インプラントの構造や材質、寿命についてご説明します。
目次
インプラント治療って何ですか?
インプラントは「植え付ける」といった意味の英語で、心臓のペースメーカー、膝関節や股関節などの人工関節、美容整形を目的としたシリコン材料などは、いずれもインプラントと呼ばれるものです。日本ではインプラントといえば歯科インプラントのことを指すことが多いです。
歯科においては、虫歯や歯周病、外傷などによって歯がなくなった場合に、歯がなくなった部分の顎骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込んで顎の骨と結合させ、それを土台に人工の歯を装着する治療法をインプラント治療と呼びます。
インプラントは天然歯以上の強さで良く噛めるようになりますので、「第2の永久歯」とも呼ばれて期待されている治療です。
インプラントの構造はどうなっているの?

歯科インプラントには様々なタイプがありますが、一般的には顎の骨に埋め込む人工の歯根にあたるインプラント体(フィクスチャー、人工歯根)、人工の歯の部分に当たる上部構造(被せ物)、そしてこの2つをつなぐアバットメントと呼ばれる部品の3つで構成されています。
アバットメントはネジの形をしているスクリュータイプが主流で、インプラント体に固定されます。アバットメントの上に人工歯が装着されますが、人工歯がインプラント体に直接付くタイプもあります。
インプラントはどんな材質で出来ているの?
噛む力には個人差がありますが、およそ40~60kgの方が多いといわれます。インプラントはチタンまたはチタン合金が使用されています。
チタンは、生体組織への親和性が高く、骨と結合しやすいという特徴があります。チタン製の人工歯根が顎骨に埋め込まれると、生体はチタンを異物と認知せず、組織に取り込もうとしますので、半年ほどでチタンと骨はしっかりと結合します。チタンが一度骨とくっつくと、問題がない限りは長期間に渡って安定した状態を保ち続けます。
今から60年程前に、スウェーデンのブローネマルク教授がこの現象を発見し、オッセオインテグレーションと名付けました。
チタンやチタン合金は、アレルギーが殆ど起こらないことも、インプラントの材質として使われている大きな特徴です。
インプラントはどのくらいもちますか?
インプラントの耐久性(寿命)は条件によって異なりますが、通常は施術10年経過後の定着率は90~95%程度といわれています。インプラントでトラブルが起こる原因は、歯科医師の技術不足、経済的な理由による無理な設計や噛み合わせ、口腔内の汚れによるインプラント周囲炎などです。
インプラント治療が適切に行われ、定期的なメンテナンスによるチェックと日頃のセルフケアをしっかりと行えば、20年以上もつこともまれではありません。
インプラントに異常が起こった場合にすぐに発見出来るように、メンテナンスには必ず通うようにしましょう。
インプラントのメリット・デメリット
インプラントのメリット
- 天然の歯と同じ感覚で噛めて味をしっかり感じられる
- 構造的に自立しているので周囲の歯を傷つけない
- 天然の歯と変わらない自然な見た目に仕上がる
- 噛むたびに顎骨に力を加えるので、顎の骨が痩せてしまうのを防ぐ
- セルフケアは天然歯と同に歯磨きを行う
インプラントのデメリット
- 外科手術が必要
- 保険が適用されない自費診療なので費用が比較的高額になる
- 治療期間が長い
- 重度の糖尿病などの全身疾患がある場合は治療ができない
まとめ

インプラントは保険がきかない自由診療のため、治療費が高額です。外科手術も必要ですので、不安に思われる方も多いと思います。
失った歯の位置や本数、顎の骨や歯茎の状態によっては、ブリッジや入れ歯の方が適している場合もあります。
費用を抑えたい、長くもたせたいなど、患者さんの様々なご希望をまずお聞かせください。そのうえで、担当医と話し合ってより良い治療を選択しましょう。