入れ歯は煮沸消毒しても大丈夫？正しいお手入れの仕方は？

クローバー歯科クリニック豊中本町院　歯科医師　金子 浩康

雑菌が心配なので入れ歯を煮沸しようと思っている方、ちょっとお待ち下さい。煮沸消毒をすると確かに殺菌には効果的ですが、入れ歯の煮沸消毒はNGです。その理由をご説明します。

入れ歯は高温のお湯で変形することもある

殺菌するなら煮沸消毒すればいいのでは？と思う方もおられるかもしれませんが、入れ歯のプラスチックの部分は熱湯には弱く、煮沸したり高温のお湯にさらすことで、入れ歯が変形してお口に合わなくなってしまう危険があります。お湯の温度は60度を限度として、それ以上熱いお湯はNGです。

高温で入れ歯を変形させてしまうくらいなら、市販されている入れ歯洗浄剤を使いましょう。また、アルコール消毒も入れ歯が割れたり変形が起こる可能性がありますので、使わないようにしましょう。

入れ歯のお手入れのタイミングは？

入れ歯は必ず毎日外して洗いましょう。入れ歯には雑菌が繁殖しやすいため、毎食後入れ歯を外して洗うのがベストですが、職場や出先での外食などで、入れ歯を外して洗えない場合もあると思います。そんな時は、夜にご自宅で入れ歯を外した時に、丁寧に洗いましょう。

入れ歯のお手入れの仕方

入れ歯のお手入れは、お口から入れ歯を取り外したあとは流水で洗います。

入れ歯用のブラシがドラッグストアで販売されていますが、どれを選んでいただいても大丈夫です。大小のブラシがあれば大きな面も小さなバネの周囲も洗いやすいと思います。
歯ブラシで洗っても良いのですが、入れ歯を洗うと力が入って毛先が広がりますので、通常歯磨きをする歯ブラシの使い古しを入れ歯用に使うと効率が良いです。

入れ歯用ブラシで汚れを落としたら、入れ歯用洗浄剤を入れた水に浸けます。

つけ置きタイプの入れ歯洗浄剤には、入れ歯に着いた汚れを浮き上がらせる作用の他、殺菌作用があり、入れ歯を清潔に保つためにはぜひ専用の洗浄剤をお使いいただきたいと思います。

歯磨き剤を使って入れ歯を洗わないで！

歯磨き粉には研磨材が配合されており、その成分によって入れ歯の表面を擦って傷をつけてしまう可能性があります。研磨剤を含まない歯磨き剤ならば大丈夫ですが、本来歯磨き剤は歯から歯垢を落として虫歯や歯周病になりにくくするためのもの。入れ歯のお手入れとは用途が違いますので、歯磨き剤の使用はおすすめできません。

入れ歯の洗浄中に落として割ってしまわないためには

入れ歯のお手入れは洗面所でなさる方が多いのではないでしょうか。うっかり手を滑らせて入れ歯を落としてしまうと、割れてしまう可能性があります。入れ歯が割れてしまうリスクを避けるためには、小さめの洗面器やボウルを使って水を受けながら入れ歯を洗うと安全です。

入れ歯の保管方法

入れ歯をお口から外して保管される際には、入れ歯が乾燥しないようにコップなどに水を入れ、その中に入れ歯を浸してください。

入れ歯のプラスチックの部分は乾燥すると変形してお口に合わなくなってしまう場合がありますので、乾いた状態で長期間保管しないように気をつけましょう。

寝る時には入れ歯を外す？

入れ歯に慣れてくると、一日中つけていても違和感がないので、付けたり外したりする手間を考えると、付けたままでもいいのでは？と思われるかもしれません。しかし、夜、お休みになる前に、入れ歯は必ず外してください。

入れ歯の床の部分には細菌が繁殖しやすく、入れ歯を数日間も洗わずにお口に入れたままで食べ物や飲み物が誤って気管に入ってしまうと、誤嚥性肺炎（嚥下性肺炎）のリスクがあります。

しかし患者さんのお口の状態によっては、入れ歯をつけて寝た方が良い場合もありますので、ケースバイケースといえます。念のため歯科医師におたずねください。

入れ歯のお手入れの仕方に関するQ&A

まとめ

以上のように、入れ歯には正しいお手入れの方法があり、それを毎日行う必要があります。極端に熱い温度で洗うと入れ歯が変形する恐れがありますので、煮沸は行わないようにしましょう。入れ歯はブラシと水道水できれいに洗えますし、入れ歯洗浄剤があれば汚れの除去率が上がってなお良いです。