インプラントは顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に歯を装着する治療法で、入れ歯のように取り外してご自身で洗浄する必要はなく、基本的には普段どおりの歯磨きでお手入れができます。しかし、手術直後は傷口がデリケートな状態のため、うがいやブラッシングは慎重に行う必要があります。また、インプラントは人工物であるため、治療後は長く快適に使い続けるための正しいケア方法を守ることが重要です。今回はインプラント治療後の歯みがきについて、わかりやすく解説していきます。

インプラントの歯磨きはなぜ重要なのか

インプラントは虫歯にならないから歯磨きはそこまで必要ないと思っていませんか。確かに、インプラントは人工歯のため虫歯にはなりません。しかし、インプラントを埋入している歯茎や骨は人工物ではありません。インプラント周囲炎という歯周病に似た炎症を起こすリスクがあります。

インプラント周囲炎とは

インプラント周囲炎になってしまった場合、どのような深刻な症状を引き起こすのか、ご説明します。

  1. 歯ぐきが腫れる
  2. 出血する
  3. 膿が出る
  4. 最悪の場合インプラントが抜け落ちる

主な原因は歯垢であるため、天然歯と同じように、インプラントをしていても毎日の歯磨きが非常に重要なのです。特にインプラント後の正しい歯磨きを理解していないと、知らないうちに炎症を進行させてしまう可能性があります。

インプラント手術後はいつから歯磨きできる?

インプラント手術当日から歯磨きは可能ですが、注意が必要です。一般的な目安を挙げていきましょう。

手術当日~抜糸(約7~10日間)までは1日2回以内にして、患部には直接歯ブラシを当てず、優しく磨きましょう。術後すぐは傷口が安定していないため、強いブラッシングは出血や炎症の原因になります。

患部以外は通常通り丁寧に磨きますが、患部は刺激を避けるようにし、歯科医師の指示を最優先するということです。自己判断でゴシゴシ磨くのは絶対に避けましょう。

術後~抜糸までのインプラントをした方の歯磨きの注意点

術後から抜糸までの期間は特に慎重なケアが必要です。

基本ルール

歯磨きは1日2回以内
患部に歯ブラシを当てない
強いうがいをしない
アルコール入り洗口液は避ける

患部周辺を磨く際は、ワンタフトブラシという毛束が小さく密集したブラシを使用すると、余計な刺激を避けやすくなります。ピンポイントで磨けて、力をコントロールしやすく、傷口を避けやすいというメリットがあります。

この時期は完璧に磨くことよりも、傷を守ることを優先しましょう。

抜糸後のインプラント歯磨きの正しい方法

抜糸後は徐々に通常のケアへと戻していきますが、インプラント治療をした後の歯磨きは天然歯の際よりも丁寧さが必要です。抜歯後の歯磨きについて一通りご説明しましょう。

基本の磨き方

  • 毛先の柔らかい歯ブラシを使用する
  • 歯と歯ぐきの境目に45度で当てる
  • 小刻みに優しく動かす
  • 1本ずつ丁寧に磨く

インプラントは歯根膜がないため、炎症に気付きにくい特徴があります。そのため痛くないから問題ないというわけではありません。

なぜ45度が重要なのか

歯科医師や歯科衛生士が勧める45度ブラッシングは、主にBass法に基づく磨き方です。ポイントは、鉛筆を持つようなイメージで歯ブラシの毛先を歯に対して45度に傾け、歯と歯ぐきの境目に当てることにあります。この角度が重要なのは、毛先が歯肉溝と呼ばれるわずかなすき間にやさしく入り込みやすいためです。直角に当てるだけでは届きにくい部分にも毛先が届くことで、歯周病菌の原因となる歯垢を効率よく除去しやすくなります。

45度ブラッシングは、歯ぐきを傷つけにくく、歯と歯ぐきの境目を効果的に清掃できる磨き方です。

インプラント専用ケア用品の選び方

インプラントを長持ちさせるためには、歯ブラシだけでなく、補助清掃用具も重要です。おすすめアイテムをご紹介しましょう。

柔らかめ歯ブラシ
ワンタフトブラシ
インプラント対応可能なデンタルフロス
ゴムタイプの歯間ブラシ
洗口液

歯間部分は汚れが残りやすいため、歯間ブラシの使用は必須です。ただし、金属製ワイヤーが強いタイプは歯ぐきを傷つける可能性があるため、サイズ選びは歯科医院で相談するのがおすすめです。

洗口液の選び方

インプラントのケアに使う洗口液は、殺菌作用や炎症を抑える作用があるものを選ぶのが基本です。成分としては、CPC(第四級アンモニウム塩)やクロルヘキシジンなどの殺菌成分、さらにアズレンのような消炎成分が含まれているものが適しています。一方、ヨード系の洗口液は注意が必要で、チタン製のインプラントに影響を与え、表面を傷めるリスクがあるため、避けたほうがよいとされています。代表的な製品としては、次のようなものがありますが、取扱いについては、ご確認ください。

製品名 主な特徴 主な成分
コンクールF 低刺激で使いやすく、殺菌効果が長く続きやすい薬用洗口液 CPC配合、毎日のインプラントケアに取り入れやすい
モンダミン ハビットプロ 歯科医院専売品として知られ、殺菌と再付着予防に配慮 殺菌成分配合、汚れの再付着を防ぎやすい
Systema SP-T メディカルガーグル 殺菌に加えて歯ぐきの炎症ケアも意識した処方 アズレン配合、歯ぐきが気になる方にも向く
バトラー CHX洗口液 口腔内を清潔に保ちやすい殺菌タイプの洗口液 グルコン酸クロルヘキシジン配合

インプラントの歯磨きを怠ると起こるリスク

インプラントの歯磨きを少しくらい大丈夫と怠ると、リスクが高まります。

  • インプラント周囲炎
  • 骨吸収
  • インプラント脱落
  • 再手術の可能性

人工歯だから虫歯にならないと思われがちですが、インプラントを支える顎骨や歯肉は不衛生であれば細菌感染が起こってしまいます。顎骨にまで細菌感染が及ぶ重度のインプラント周囲炎では、フィクスチャーと顎骨の結合部分がぐらぐらして外れることがあります。治療のほとんどが保険適用外であるため、高額な費用が発生し、再手術になるとまた費用や治療期間がかかります。インプラントの部分や天然歯の両方ともに、歯磨きを適切に継続することが、最大の投資回収といえます。

インプラントを長持ちさせるための習慣

ただ、インプラントを長持ちさせるためには、毎日の歯磨きに加えて、このような習慣も取り入れていきましょう。

デンタルフロスやタフトブラシ、歯間ブラシを活用する
歯の部分は歯ブラシで磨けますが、歯間は歯ブラシの毛先が当たらず、汚れや歯垢が残りがちです。タフトブラシや歯間ブラシで歯と歯の間を磨き、デンタルフロスで歯と歯肉の間を磨きましょう。

3~6ヶ月ごとに歯科医院での定期検診へ通院し、プロによるクリーニングを受診する
インプラントはアフターフォローがとても大事です。定期検診で、噛み合わせやインプラント周囲炎になっていないか確認を行いましょう。また、歯科衛生士によるクリーニングを受け、セルフケアでは落とせない歯石を除去しましょう。

禁煙する
無事入れ終わったから、喫煙習慣を再開させていいというわけではありません。喫煙すると血流が悪くなり、免疫力が低下したり、唾液の分泌減少が起きます。インプラント周囲炎になりやすい環境となってしまうため、インプラント後そのまま禁煙するのが望ましいです。

インプラントは入れたら終わりという治療ではなく、入れてからがスタートです。

まとめ

インプラントの歯磨きについては、術後は1日2回以内で優しく行い、抜糸後は通常ケアと丁寧に磨きましょう。歯間ケアを必ず行い、定期検診を継続することが重要です。

インプラントは正しくケアすれば10年、20年以上使用できる治療法です。しかし、インプラント後の歯磨きを怠ると寿命は大きく縮みます。毎日の少しの積み重ねが、将来の大きな差になります。大切なインプラントを守るために、今日から正しい歯磨きを始めましょう。